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整流管の代替用SSRを試してみた

真空管アンプの整流には,整流管を使う方法と半導体ダイオードを使う方法があります(細かいことを言うと,ダイオードは二極管のことも指す用語なので,正確には半導体とかシリコンとか付けた方が良いですが,最近はダイオードと言ったら半導体を指すことがほとんどですね.もっと細かいことを言うと,二極管,三極管というのは構造を指すだけなので,プリ管,パワー管,整流管という具合に役割で呼び分けることが多いです).
デバイスとしての整流管とダイオードの利点・欠点については色々知られていますが,どちらも欠点は少ないのでわかり易くするために敢えて各々の欠点だけをざっくりまとめでみます.

【整流管】

  • 発熱が大きい⇒寿命が短い(~一年と言う人も居るくらい)
  • 順方向電圧降下が大きい(これが上記発熱にも通じています)

【ダイオード】

  • 逆回復時間が長い(ファストリカバリダイオードの様に半導体中にキャリアトラップを設けて逆回復時間を短くすると,今度は順方向電圧降下が大きくなるというジレンマがあります.ショットキーバリアダイオードは,逆回復時間が短く,順方向電圧降下が小さいので理想的ですが,逆電流が大きい,逆電圧の耐圧が低いといった欠点があります⇒最近はSiCダイオードに期待が集まっています)
  • ギターアンプの場合,ピッキングニュアンスが表現しにくい,コンプレッサ的な役割をしない

特に,ダイオードの欠点の二点目についてですが,これは,整流管の内部抵抗が数十から数百Ωあることや,整流管が突入電流に弱いために整流管直後のキャパシタに20μF程度の小さいものしか付けられないことによる電源の弱さに起因すると考えられています.

いわゆる安定化電源の様に大きなキャパシタでどっしりとした電源構造すると,真空管アンプでも,トランジスタアンプ的な平坦なピッキングニュアンスになるそうです.その意味では,整流管向けの小さめなキャパシタのままで,整流管をダイオードに変更すれば,真空管アンプ的なピッキングニュアンスを実現できるかと思われます.

そこで,目にしたのが以下に紹介する,整流管とピンコンパチな半導体整流器です.

SOVTEK製で,全体は樹脂モールドされています. 放熱が気になりますが,真空管のB電源は電流が少ない(今回のアンプで最大75mA)ために,順方向電圧降下が低い半導体ダイオードにおいてはほとんど発熱がありません.

早速差し替えて試してみます.元の整流管5AR4の順方向電圧降下も17Vで,300V近辺のB電源にとっては小さめな電圧降下であるため,ダイオードに変更しても際立った差は見られませんでした.また発熱もほぼ無く,寿命も長そうなので,長時間練習の際はこのブリッジで代用するのが経済的かも知れません.

あるいは,しばらく5AR4で実験して,寿命が尽きたら5AR4を分解して端子部分だけ再利用してSiCダイオードブリッジを自作するのも面白いかな?

Fender Champ型真空管ギターアンプと整流管とエージングと

以前作成したFender Champ型真空管ギターアンプですが,時々鳴らして楽しんでいる程度でした.ある日,ボランティア活動先で指導員をされている方が真空管アンプにとても詳しい方で,その方から東芝の整流管5Y3を分けて頂きました.
元の設計では,5AR4という整流管を用いていますが,5AR4は傍熱管で立ち上がりは遅く,順方向の電圧降下が少なめです(-17V @ 225mA).一方,5Y3は直熱管で立ち上がりは早く,順方向の電圧降下は結構大きめです(-60V @ 125mA).
5AR4と5Y3は,ピン配置は互換性があるため,とりあえず差し替えてみます(パワー管等のプレート電圧が低くなる方向なので,大きな問題はありません).
早速ギターを接続して試してみます.軽く引く限りはあまり変化は見られません.しかし,強めにピッキングしたり,ゲインを上げたりしていくと,歪が早めに来ます.考えてみれば当たり前なのですが,パワー管(6V6GT)のプレート電圧が低くなって動作点が変わっているために,歪易くなっている様です.室内で小さめの音で歪ませるためには,順方向電圧降下の大きい整流管を使うというのもひとつの手かも知れません(若干変なアプローチですが).
なお,ダイオードと同様,順方向電圧降下が大きい部品は発熱も大きいので,その点は注意が必要です.

また,傍熱管と比較して直熱管である5Y3は,立ち上がりが早いのですが,それが傍熱管である12AX7や6V6GTへ悪影響を与えないのか?という点が気になるかも知れません.色々調べたのですが,ヒーターが温まらないうちに高いプレート電圧がかかることによる悪影響は特に問題無い様です.真空管型のギターアンプでは,先にヒーターだけ加熱するスタンバイスイッチとプレート電圧を加えるメインスイッチが分かれているものがありますが,これは,真空管へ与えるダメージという点では,意味が無いというのが正しい認識だそうです.
MARSHALLのアンプも,昔のデザインを踏襲してスイッチを二つに分けているものもありますが,新しいモデルでは一つのスイッチに集約されているものも散見されます.それらのアンプについて大丈夫か?というQAが海外サイトで出ていますが,きちんと技術的に解説されていますので,気になる方はそちらを参照されると良いでしょう.
確かに,普通のオーディオ用真空管アンプでは,スイッチが分かれているものは見かけられないですね.
また,ヒーターだけ赤熱して,プレート電圧をかけないという状態を長く続けるのは,真空管に悪影響を与えるという説明も見かけました.赤熱されて放出された熱電子が,プレート電圧が無いことによって真空管内を彷徨い,不必要にゲッターが失われる可能性を示唆されていました.

エージングについては,重要性をとても実感しています.普段はBlackstar FLY3で練習していて,たまに真空管アンプを使っていたのでなかなか気が付かなかったのですが,今回時間をかけて色々実験しているうちに,初期と比べて随分と良い音がする様に変わってきたことに気が付きました.最初は整流管の影響と思ったのですが,それとは別軸方向に音質が良く(ギターらしく)なっている気がします.

ということで,この実験の後は,なるべく真空管アンプの方を使うようにしています.夜間は自作アッテネータ+ヘッドフォンでも良いので.真空管アンプはなかなか奥が深く,楽しいですね.

シールドあれこれ

シールドと言っても,電子工学の一般的なシールドでも,バリアのことでもありません.エレキギターとアンプをつなぐケーブルのことです.この業界?では,なぜかシールドと呼ばれています.とてもハイインピーダンスな系で外部ノイズが乗りやすいため,アース側でシールドされたシールド線なのでシールドと呼ばれるようになったのではないでしょうか?

エレキギターの弦の振動を電気信号に変換するマイクの役目をする部品はピックアップと呼ばれています.磁化した金属コアの周りに細い被覆線(今ならUEWでしょうかね?)をバーアンテナよろしく何千回も巻き付けたコイル構造になっています.エレキギターの弦も鉄にニッケルメッキ等の素材でできています.そのため,弦が振動すると,ピックアップの金属コアからの磁力線が弦の振動に引きずられて動き,それが前述のコイルを横切るため起電力が生じます.おそらくこれが電磁気学的な説明になるかと.
弦が磁性体で,それがコイルのそばで振動する,とか,磁界の中でコイルが振動するとかの単純な構造ではなく,コイルのコアが既に磁性体で,そこからはみ出た磁界を同じく磁性体で出来た弦がかき乱して,それをコイルがセンスするという,面白い構造です.最初に作った人はどこまで理解して発明したのかわかりませんが,くどい様ですが,面白い構造です(ある意味,金属探知機にも近いかな?だいぶ遠いけど).

かなり話が脱線しましたが,このピックアップに発生した起電力を全く増幅せずにそのままキャパシタや可変抵抗器等の受動素子だけを通過してエレキギターのジャックからシールドに入り,5mとか7mとかひっぱられて,やっとアンプに到着します.
何千回も巻かれた細いコイルからの起電力なので,インピーダンスは500[kΩ]とか1[MΩ]のオーダーになるため,ギターアンプの入力もそれくらいのインピーダンスでマッチングする様に設計されています.そのため,普通のアンプのライン入力(600[Ω])とかに接続しても音が鳴りません.
回路的には真空管のグリッドやFETのゲートで入力する感じですね(1[MΩ]のプルダウン抵抗付).

またまた,話がそれました.回路に詳しい人ならば気が付くと思いますが,とってもハイインピーダンスなのに5[m]とか7[m]も引っ張るというのは無茶な構造です.ですから,このシールドの特性次第でものすごく音が変わります.
オーディオの世界では,よく無酸素銅がどうの,半田は使わない方が良いだの,細かい話で音の良し悪しを語られています.エレキギターのシールドも,そんな世界かと思っていたのですが,この様に冷静に検討してみると,その様な難しい話ではなくても,少しの違いで大きく音質に影響を与えそうなことが想像できます.例えばシールドのキャパシタ成分の影響で簡単にハイ落ちしそうですし.

当初,ギターキットについてきたシールドを使って満足していました.6.3[mm]のプラグがついたケーブルは,それしかなかったので.
次に,JVCの一般的なオーディオケーブルを使ってみました.ギター用ではないので,普通に細いケーブルです.細いためキャパシタ成分が少ないらしく,高音の抜けが明らかに良くなりました...が,シールドされていないので,50Hzの電灯線ノイズを拾いまくりです.

それでは,ギター用に開発された専用シールドはどんなものでしょうか?世の中で評判の良いカナレのケーブルで試してみます.

それほど高くもなく,それでいてプロの世界でも使われている?と評判の良いケーブルです.早速使ってみましたが,明らかに調子良いです.何の不満も無いというか,ケーブルの存在を忘れる感じです.音がこもることもなく,ノイズも少なく.
ハイ落ちしてしまう,キャパシタ成分の多いシールドもそのままゴミにする必要はないかと思います.例えばエフェクタを出た後ならばかなりインピーダンスは下がっているので,そこで使えば影響は少ないでしょう.
長々と書いてしまいましたが,エレキギターの世界でとても特徴的なのがシールドだと思ったので,力が入りました.

ギターアンプ Blackstar FLY3

ギター練習を真面目に再開して最初に買ったのはこのギターアンプでした.
以前,ギターを作ったばかりの頃はアンプのことをあまり気にしていなかったのですが,エレキギターのピックアップからの出力が(とても高いインピーダンスなまま)直にギターアンプまで来ているという,とっても豪快なシステムであることに気づき,ギターアンプの特殊性が気になりだしました.
真面目に練習するためにはコンパクトで使い勝手がよく,音もそこそこ良いのが欲しいということで,選んだのがBlackstar FLY3です.通常は黒色なのですが,限定で出ていたBritish Greenなやつを選びました(限定と言いながらいつまでも売ってるのはご愛敬です).
これは,なかなか良いです.

【クリーンの音が良い】
筐体が小さい割には,まともな音がします.特にクリーンの音が良いです.
オーバードライブもついていますが,軽くかける程度ならば良いですが,強くかけるとちょっとノイジーであまり気持ちよくないです.どちらにしろ,あまりエフェクトをかけると練習にならないので,クリーン気味の設定でよく使います.

【LINE INが便利】
原曲を再生しながて練習したい時に便利です.理由は,LINE INはアンプのボリュームが効かないので,ギターの音量はアンプで調整,原曲の音量はプレーヤ側で調整という具合にうまく別々に合わせられるからです.
原曲だけではなく,スマフォ・アプリのメトロノームを聞きながら,とか色々応用が利きます.

【電源】
単三電池6本です.専用ACアダプタは6.5[V]という特殊な電圧で2.5[A]を要し,結構なお値段(サウンドハウスで3280円+税)がします(アンプなので,消費電流は多いですね).DCジャックは例の2.5[mm]の方なので,別途用意する場合は注意が必要です.秋月の6[V]のACアダプタのプラグを2.5[mm]に交換してつないでみましたが,スイッチングノイズがかなり聞こえますので,専用品を使った方が良いかも知れません.

電池の場合,エネループでも動くのですが,毎晩帰宅後1,2時間練習するペースで一週間くらいは持ちます(もっと持ったかも知れません,だんだんLEDが暗くなってきます).

真空管ギターアンプ ~テスト,キャビネット製作編~

真空管ギターアンプの半田付けが一通り終わり,早速テストです.
ギターアンプ用のキャビネットはまだありません.
今回の真空管ギターアンプには,LINE出力があるので,そこから秋月の半導体アンプを経て,2011年7月号ステレオ誌の付録だったFostexのスピーカー(P-800,コイズミのエンクロージャ入り)に接続しました.オーディオ用のスピーカーに接続するのは破壊するおそれがあるので注意するようによく言われますが,今回はLINE出力からの接続なので安心です.
ギターをつないで早速試奏,なんとも言えない柔らかい音がスピーカーから流れてきます.
半導体アンプとかオーディオスピーカーを経ているのに,この感じの良さだったために,更なる期待値が高まり,早速スピーカーキャビネットの製作を開始します.
ギターアンプ用のスピーカーユニット(CELESTION Eight15/8,8インチ)は既に購入済みだったので,あとは,適当な木箱を探します.Fender型のアンプなのにJENSENではなく,CELESTIONなのか?とか,色々突っ込みどころがありますが,そこまでのこだわりは無いもので.

今回のアンプ/スピーカーは自宅練習用なので,大きな音を出さないことが望ましく,理想は12インチと言われる中8インチのスピーカーを選択,それに合わせて30cmくらいの大きさの箱が丁度良いです.ホームセンターでちょど良さそうな木箱を入手,スピーカーや端子接続用の穴を開け,黒くスプレー塗装して完成です(カインズホームのスプレー缶は200円弱で安くて嬉しい).
ギターアンプキャビネットの裏側はオープンなのかクローズドなのか,色々あるみたいですね.バスレフになっていないものが多いです.裏を開けるのは,後ろに居るドラマーに音がよく聞こえるようにとか色々な配慮がある様ですが,今回は密閉.

早速真空管ギターアンプと接続します.
ここで余談です.ギターとアンプを接続する際に”シールド”と呼ばれるケーブルを使います.これと同じ様なケーブルでギターアンプとスピーカーを接続するのですが,こちらは場合によっては100Wとかの電力を伝送することになるので,専用のものが用意されています.スピーカー一体型のギターアンプが多いためか,この手のケーブルをあまり売っていないので,材料を通販で取り寄せて自作しました.太いケーブルです.6.3mmのプラグもゴツイです.

このケーブルでアンプと接続し,早速試奏.音量を下げても気持ちよく響きます.ギターアンプ用のスピーカーは96dBとかの高効率なものが多く,今回のアンプの様に5Wくらいしか出力がなくても,大きな音がなるので注意が必要です.

ついでに,色々計算して,固定抵抗でアッテネータも作りました.アンプ側から見て8オームになり,スピーカーも8オーム(ヘッドフォンは32オームだけど両耳をパラにするので16オームかな?)で,100mWくらいがスピーカー/ヘッドフォン側に行き,5Wのほとんどは抵抗で消費する様に計算して設計すれば良いので,オームの法則さえ知っていれば簡単です.
60円くらいのセメント抵抗を2,3本でできたかと思います.
これで,自宅でも,GAINをフルにしてアンプの歪を堪能することができます.

真空管ギターアンプ自作

真空管ギターアンプで練習した方がピッキングがうまくなるとか,色々聞きかじってしまうと,電子工作好きとしては,作りたくなってしまいます.

以前も紹介したかと思いますが,参考文献として有名です.
設計の方法から部品の入手方法まで丁寧に書かれていて,楽しく読めます.
ほぼほぼこの本に従って製作してみました.トランスの入手が困難なことが多いのですが,東栄変成器さんの前を通りがかった時に「ありますか~?」と聞いたら「ギターアンプ(作るの)?,あるよ!」と見透かされた様に(笑)言われ,嬉しくて一気に作る方向へ加速した次第です.

普段数ボルトの回路しか作っていないので,280[V]とかの回路を作るのは部品集めの段階からドキドキで,小学生の時に初めて安定化電源を作った時の気分を思い出しました.実は,子供の頃からなぜかトランスが好きだったというのもあります.

真空管アンプは,半導体で構成された電子回路と比較して部品点数は少ないので,半田付けはサクサク終わるのですが,その前のシャーシの加工は結構時間がかかります.電源トランス用の四角い大穴を開けたり,真空管用の大きな丸穴を開けたり,ハンドニブラやシャーシパンチが大活躍です.

真空管は,ラジオデパートで揃いました.5AR4という整流管が結構お高いです.電流が流れた時に電圧降下が大きくなって,コンプレッサー的な働きをするから,ダイオード整流よりも整流管がギターアンプに向いているとか,色々な説があるので,今回はとりあえず使ってみましたが,発熱も大きく,寿命も一年くらいで交換らしいので,いずれダイオードブリッジに変更してしまうかも...
整流管の中で,5AR4は電圧降下が少ない方で,10Vくらいの降下で済みますが,5R4GYBとかだと63Vも降下しますので,パワー管の設計が変わってしまいます(電源トランスのタップを変更するという手もありますが).順方向の電圧降下が0.6~0.7[V]くらいのSiダイオードとはエライ違いです.最近は,ショットキーバリアダイオードのダイオードブリッジもあるので,尚更ですね.
今後,整流管をダイオードブリッジに変更する際は,パワー管に印加される電圧が高くなってしまうことにも注意が必要です(数百ボルトの世界での10Vの違いだから大したことないかも知れませんけど).

完成後については,次回に.